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阪神淡路大震災10年目を契機に始まった兵庫モダンシニアファッションショー。12月の本番まで8ヶ月間に亘り、ショーに関わる人々の姿を追った。
【終了日:12/2(金)※1週限定上映】
【監督】田中幸夫
2016年/日本/75分/オリオフィルムズ/ブルーレイ上映
11月26日(土)〜12月02日(金) |
11:30〜12:50 |
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一般 | 大専 | シニア | |
通常 | ¥1,500 | ¥1,200 | ¥1,100 |
会員 | ¥1,200 | ¥1,100 | ¥1,100 |
【『徘徊 ママリン87歳の夏』(2015)で認知症映画のイメージを一変させた田中幸夫監督最新作。】
人は忘れる生き物である。そしてまた、人は忘れない生き物でもある。
1995年1月 阪神淡路大震災。
神戸市兵庫区は甚大な被害を受けた地区の一つだ。
あれから20年、いまだ震災前の人口は戻らず、高齢化はさらに進んだ。「一面の焼け野原、震災は戦災と同じやった」そう語る人もいる。彼らは過去を生きているのではない。今ここを生きている。嘆くのでも恨むのでもない。ささやかなハレとケ。淡々と自らの命を紡ぐ日々。
かれらの経験から学ぶことは今しか出来ない。いや、もう十分に遅すぎる。“大きな出来事”を体験した“小さな人たち”は、上から大声で叫ぶのではない。
私たちと同じ目の高さから自分にも言い聞かせるように、小さな声で語りかける。一つ一つは何処にでもある取るに足らない出来事かもしれない。しかし、かけがえのない“小さな言葉”は“遠くまで”届く。死者に、未来に届く。そして、静かに強く長く残る。
【忘れること 忘れないこと 変わるもの 変わらないもの】
阪神淡路大震災10年目を契機に始まった兵庫モダンシニアファッションショー。
12月の本番まで8ヶ月間に亘り、ショーに関わる人々の姿を追った。
歳月とは? 忘れるとは? 変わるとは? 日常とは?ハレの日とは? 装うとは?そして人が人と生きるとは? 正しい答なんて何処にもないのかもしれない。それでも人々は生きる。淡々と、限られた生を、死者たちに与えられた生を。
【STORY】
2015年夏、神戸市兵庫区の会下山公園山頂広場。
朝6時過ぎ、三々五々集まってくる人々から映画は始まる。神戸市は古くからラジオ体操会が盛んな町だ。
総勢250名あまりが集まって朝のラジオ体操が始まる。
世話役の木下文夫さん(67歳)「僕はまだまだ新米。6000回以上達成者が一杯いますよ」
伝統あるラジオ体操会が一度だけ途絶えそうになったことがある。
1995年1月阪神淡路大震災。それでも震災四日目には復活し現在に至る。
震災直後の火災を記録した映像が残っている。
「記録することは大切なことだ」元会長:山中敏夫さん(88歳)の証言が重い。
「一面の焼け野原、震災は戦災の再来だった」そう語る頼廣安子さん(83歳)は
「焼夷弾の雨の中、妹の手を引いて会下山に向かった」日のことを昨日のことのように憶えている。
握り締めた手の温みと鼻に付く焼け焦げの臭い。兵庫区の人口はいまだに戻らず、町には高齢者が目立つ。
震災から十年を契機に、「兵庫モダンシニアファッションショー」が開かれてきた。
毎年12月に様々な人々が思い思いのファッションでステージに立つ。映画はショー本番までの半年を追う。
神戸芸術工科大学ファッションデザイン学部長・見寺貞子教授(60歳)は元大手百貨店のバイヤーだった。
震災を経て大学に移り、人間とファッションの好ましいあり方を追求してきた。
「ファッションショーは、教えるというより学ぶことの多いライフワークだ」と語る。
「お年寄りたちはめちゃ元気。元気をもらうというより元気を吸い取られるよう」と笑う。
出演メンバーは多士済々。仲良し三人組の男性陣(75歳78歳79歳)は生粋の神戸っ子・兵庫人だ。
女性陣のリーダー頼廣さんは言う。
「男性と違い女性はエエカッコしない。皆あけすけ。いつも仲良くとはいかない。諍いもあったり…。だって人間だもの」仲間の春次子さん(83歳)は震災復興住宅で独り暮らし。月二回開くふれあい喫茶では、朝早く起きて毎回卵100個を茹でる。行政などの支援があるとはいえ、実際に切り盛りするのは住人である高齢者自身だ。
下釜誠幸さん(76歳)は長崎県浦上出身。長崎の原爆投下を体験した。
「目の前に太陽が現れたみたい」ファッションショーには障害のある人たちも参加する。
隠さない、構えない、飾らない。シビアだが温かい。
彼らは自分という衣もさらりと脱ぎ捨てて闊達自在。飄々洒脱。そこには、歳を重ねたものが持つ知恵と豊かさが宿っているようだ。夏から秋へ、それぞれの時間を生きる人々の姿が重なって…。
2015年12月6日、兵庫公会堂。
第11回兵庫モダンシニアファッションショーが始まった。ささやかなハレのステージ。ショーの翌日。会下山公園山頂広場には、変わらぬラジオ体操会のメンバーの姿があった。ただ、夏とは違い未だ夜明け前で暗い。前日ショーに参加した木下さんは二日酔みたい。
そこにはショーの裏方を務めた見寺教授や学生達の笑顔もあった。
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