ささいな隣人トラブルが狂気の暴走を招く!身も凍る北欧サスペンス!
【終了日:2019年10/18(金)※1週限定上映】
【原題】Under the Tree
【監督】ハーフシュテイン・グンナル・シーグルズソン
【キャスト】ステインソウル・フロアル・ステインソウルソン,エッダ・ビヨルグビンズドッテル,シグルヅル・シグルヨンソン,ソウルステイン・バックマン,セルマ・ビヨルンズドッテル
2017年/アイスランド,デンマーク,ポーランド,ドイツ/89分/ブロードウェイ/DCP
10月12日(土)〜10月18日(金) |
12:35〜14:05 |
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一般 | 大専 | シニア | |
通常 | ¥1,800 | ¥1,500 | ¥1,100 |
会員 | ¥1,500 | ¥1,200 | ¥1,100 |
【スウェーデン、デンマーク、ノルウェー、フィンランド、アイスランド。】
雄大な自然と固有の文化を持つ北欧諸国は、さまざまな国際的な“幸福度ランキング”や“男女平等指数”等でつねに上位に名を連ね、高度な教育や福祉のシステムも注目を集めている。ところが、そんな一見“いいことづくめ”のこれらの国々では、社会や人間のダークサイドに目を向けた鋭くもユニークな映画がいくつも作られており、フィンランドの巨匠アキ・カウリスマキの諸作品や2017年カンヌ国際映画祭パルムドールに輝いたスウェーデン発の『ザ・スクエア 思いやりの聖域』がそうであるように、独特のユーモアのセンスも際立っている。また、日本では映画、TVドラマ、小説といったフィクションの分野で、北欧サスペンスや北欧ミステリーといった呼称が定着して久しい。近年、北欧諸国で盛んに作られているスリラー、ミステリーは極めてドラマ性が高く、多くの熱烈なファンを獲得している。
北大西洋に浮かぶ島国アイスランドから届いた『隣の影』も、そんな“北欧ニューウェーヴ”の1本として必見のサスペンス映画である。ささいなクレームから始まった隣人トラブルが、あれよあれよという間に恐ろしい事態へ発展していく様を描いた本作は、2017年のヴェネチア国際映画祭オリゾンティ部門でワールドプレミアされたのち、本国アイスランドでは同時期公開のハリウッド・ホラー『IT/イット “それ”が見えたら終わり。』と渡り合って興収チャート1位を獲得。同国のアカデミー賞にあたるエッダ賞で作品賞、監督賞、脚本賞を含む7部門を独占し、米アカデミー賞のアイスランド代表作品に選出された。そのほかにも世界各国の映画祭で絶賛を博しており、ジャパンプレミアとなったSKIPシティ国際Dシネマ映画祭2018では国際コンペティション部門の監督賞を受賞した(出品タイトルは『あの木が邪魔で』)。
【その戦慄の悲喜劇は1本の木の“影”から始まった。
アイスランドの俊英が繊細かつ巧妙に紡いだ映像世界。】
すべての始まりは、閑静な住宅地で暮らす老夫婦インガとバルドウィンが、隣家の中年夫婦エイビョルグとコンラウズからクレームをつけられたことだった。インガらの庭にそびえ立つ大きな木が、いつもエイビョルグが日光浴をするポーチに影を落としているのだ。それをきっかけにいがみ合うようになった2組の夫婦は、何の証拠もないのに身近で相次ぐ不審な出来事をすべて相手の嫌がらせと思い込むようになる。その頃、元恋人とのセックス動画が原因で妻アグネスから三行半を突きつけられ、インガらのもとに転がり込んできた息子アトリも、庭のテントで寝泊まりして隣人の監視を手伝うはめに。やがてインガが家族同然に可愛がっていた飼い猫が失踪し、1本の木を挟んで激しく対立していた両家の人々は、決して越えてはならない危険な一線を踏み越えていくのだった……。
日本でも隣人トラブルのニュースがしばしば報じられているように、本作は万国共通のシチュエーションのもとで身近なテーマを扱っている。新興住宅地でたまたま隣り合わせになった2組の夫婦が、とめどもなく人間不信を増幅させ、ついには常識外れの“暴走”へと突き進んでいく姿を描出。そのリアルでドライなタッチの映像世界にはシニカルなユーモアが満載されており、主要登場人物6人それぞれが抱えるやるせない事情や感情の綾を繊細にあぶり出した脚本、演出の巧みさに唸らずにいられない。何の変哲もない1本の木がもたらす“影”をシンボリックに見せながら、ブラックなホームドラマの体裁を取った本作は、卓越した心理描写に支えられたサスペンス映画として異彩を放つ。あらゆる予想を裏切り、身も凍りつく終盤のサプライジングな展開には、それまでくすくす笑いを抑えられなかった観客さえも息をのむに違いない。
デンマーク、ポーランド、ドイツとの合作でこの長編第3作を撮り上げたのは、2012年にバラエティ誌の“最も期待される10人のヨーロッパの監督”に選ばれたハーフシュテイン・グンナル・シーグルズソン監督。ただならぬ懐の深さを感じさせるこのアイスランドの俊英が2011年に発表した長編デビュー作『Either Way』は、ポール・ラッド、エミール・ハーシュ主演の異色コメディ『セルフィッシュ・サマー』としてハリウッド・リメイクされ、そのリメイク版のメガホンを執ったデヴィッド・ゴードン・グリーン監督にベルリン国際映画祭銀熊賞(監督賞)をもたらした。
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