ドストエフスキー文学と共に歩んだ一人の女性の、数奇な半生を追ったドキュメンタリー。
【原題】Die Frau mit den 5 Elefanten
【監督】バディム・イェンドレイコ
【キャスト】スベトラーナ・ガイヤー,アンナ・ゲッテ,ハンナ・ハーゲン,ユルゲン・クロット
2009年/スイス,ドイツ/93分/アップリンク/DCP上映
4月12日(土)〜4月18日(金) |
10:00〜11:40 |
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4月19日(土)〜4月25日(金) |
16:30〜18:05 |
一般 | 大専 | シニア | |
通常 | ¥1,800 | ¥1,500 | ¥1,000 |
会員 | ¥1,500 | ¥1,200 | ¥1,000 |
84歳の翻訳家スヴェトラーナ・ガイヤーの横には、華奢な姿に不似合いな重厚な装丁の本が積まれている。『罪と罰』、『カラマーゾフの兄弟』、『悪霊』、『未成年』、『白痴』、言わずと知れたロシア文学の巨匠・ドストエフスキーの長編作品。それらを"五頭の象"と呼び、生涯をかけてドイツ語に訳した。
1923年ウクライナ・キエフで生まれ、スターリン政権下で少女時代を過ごし、ナチス占領下でドイツ軍の通訳者として激動の時代を生き抜いた彼女は、なぜドストエフスキーを翻訳したのだろうか?一人の女性が歩んだ数奇な半生にひっそりと寄りそう静謐な映像が、文学の力によって高められる人の営みをたおやかに描き出す。
心を揺さぶる研ぎ澄まされた語感と、作家への絶対的な敬意によって築かれた彼女独自の翻訳スタイル。その極意は、学生の頃にドイツ語の先生が教えてくれた「翻訳する時は、鼻を上げなさい」だ。この極意をスヴェトラーナは今でも忠実に守っている。
「翻訳というのは言葉を右から左へ移し替える尺取虫だけじゃダメよ、原文に寄り添い、一度すべてを自分の中に取り込む、つまり心で読み込まなきゃならないの」と彼女は語る。オリジナルの文章の意味だけでなく、間や空間、原作者の描いた情景を忠実に描き出すため、舞台となった小説の街を旅して、その土地の人々の暮らしぶりや地形を把握したというスヴェトラーナ。撮影当時、84歳でも熱意は変わらず文学翻訳の可能性と限界に、濃密な時間と情熱を注ぎこむ。
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