無職になって実家にいづらくなり、ワーキングホリデーで福井にやって来た韓国人女性ヨナ。日本での仕事は越前和紙作りの手伝い＿のはずだったが、職人の剛生が脳腫瘍で倒れてしまい、なんと「介護」をすることに！妻に先立たれて一人暮らしの剛生は誰にも心を開かず、偏見にまみれた悪態をついてばかり。それでも勝気なヨナはひるむことなくぶつかっていき、やがて剛生の気持ちにも思いもよらぬ変化が訪れる・・・・・・。
世界一の長寿国、日本。わたしたち一人ひとりが安心して老いを迎えるには、助け合いが欠かせない。家族や地域のかたちの変化にともない、人生のラストステージの過ごし方は多様化している。人が最期まで自分らしく生きるためには何が必要なのか？どうすれば相手を理解し、相手の生き方を尊重できるのか？本作の主人公ふたりは出会った時、あらゆる面で相容れないが、他人事だと思っていた介護を通して深い絆を育み、互いにかけがえのない存在になっていく。1年にわたるその過程をユーモアとペーソスを交えて丹念に描くことで、すべての人に人生の輝きとは何かを問いかけるエンタテインメントが誕生した。

【1500年の伝統を誇る越前和紙の里、福井県丹南地域と世界遺産に登録された韓国百済時代の古都、扶余郡でロケ】

映画の舞台は、和紙をはじめとする伝統産業が盛んな福井県丹南地域と、百済時代の面影を残す扶余(プヨ)郡。日韓国交正常化50年を迎えた2015年に撮影を敢行し、それぞれの地域の魅力を余すところなく写し取った。特に日本の原風景ともいうべき丹南地域の瓦屋根の町並みや緑豊かな自然がスクリーンに広がる様は、誰もの心に郷愁をもたらすだろう。また、越前和紙に関しては、地元の伝統工芸士の全面協力により製造現場などを完全に再現。世界にアピールする和紙の魅力を捉えている。

【石倉三郎、映画初主演にして役者人生50年の集大成アジア映画の次世代ミューズ、キム・コッピの魅力が全開】

紙漉き一筋で生きてきた伝統工芸士の剛生を演じるのは、日本の芸能史において唯一無二の存在感を放ち続ける石倉三郎。市川崑、北野武監督作品などでおなじみの豪快な武闘派のイメージを本作では封印し、職人魂を背中で物語る。大ベテランのこの新境地には、観る者誰もが胸を突かれるに違いない。

剛生と奇妙な友情を築くヨナには、韓国映画『息もできない』の型破りなヒロイン役で世界的な脚光を浴び、日本の映画好きの間でも熱烈なファンが多いキム・コッピ。本作では石倉に一歩も引けを取らない個性の強さで、予測不可能なヨナの言動をとびきりキュートに繊細に魅せる。

また、映画『明烏』でのコメディエンヌぶりが話題を呼び、NHK連続テレビ小説「あさが来た」でも活躍する吉岡里帆、映画『ちはやふる』やNHK大河ドラマ「花燃ゆ」など注目作への出演が相次ぐ森永悠希などブレイク必至の若手が、介護施設や伝統工芸の現場で奮闘する新人役で出演。そのほか、日野陽仁、内田慈、宇野祥平といった芸達者な面々が脇を固める。

主題歌は、テレビ東京「THEカラオケ★バトル」で番組史上最多9冠、フジテレビ「ものまね王座決定戦」初出演で優勝した、お茶の間でも大人気の奄美出身の歌姫・城南海(きずきみなみ)の「月の砂漠」が映画にさらなる奥行を与えている。